【30 Sep. 2020】
ドイツでは頻繁にストが行われます。
今回は労働組合ver.di(ベルディ)による都市交通部門の24時間ストで、全国130の事業者、約87,000人の組合員が参加しました。路面電車、路線バス、地下鉄などの都市交通が対象で、列車などは通常通り運行しました。
今回のストは「警告スト(Warnstrik)」と呼ばれるもので、9月25日に続く第2弾です。警告ストとは、文字通り「警告の意味を込めたスト」で、交渉に進展がなければ日を改めて(本格的な)ストが行われます。なお、警告ストも労働者の権利として法律で認められています。
ストの実施は数日前に発表されますので、市民は個々に対応策をとりますが、悪影響は免れません。ここ数年、公共交通部門のストが多発しており、利用者は落胆と腹立たしさの入り混じった気持ちで、その日を迎えます。
公共交通でも後継者不足問題
「1998年に比べ、公共交通利用者は24%増加したにもかかわらず、職員数は18%(15,000)減少している(ver.di)」。仕事は増えたのに職員数は減り、労働環境の悪化は限界を超えているというのが労働者側の言い分です。
こういった状況は、公共交通の将来にとっても大きな問題です。現役世代の年齢構成の偏りから、今後10年間で約半数の職員が定年を迎えます。ドイツでも少子高齢化が進んでおり、十分な労働力を確保するには、よりよい労働環境と後継者教育の充実が不可欠です。
具体的な要求には、例えば「すべての職員を対象に、年間最低30日の有給休暇、あるいはそれに代わる金銭的な支払い」などがあります。
当然、雇用者側にも言い分があります。
職員数の減少は合理化努力の結果。気候変動防止のため、よりクリーンな車両の導入が必要で、財政的な余裕はない、などなど。
コロナの影響
現在進行中のコロナ禍も、労働環境に影を落としています。
運転手やカウンターの職員は、コロナ感染のリスクを負いながら働いているわけで、それに対する補償があってしかるべき。
一方の雇用者側にとっては、コロナ禍で乗客数が落ち込んでいる。リモートワークの普及で長期的な乗客数の変動も読み切れない。この状態で、支出を増やすことはかなり難しい、などなど。
もし日本であれば「コロナ禍で『みんな』が苦しんでいるときに、ストをするとはけしからん。職が保証されているだけでもありがたく思え!」との感覚が強いのではないでしょうか。ストを強行するなら、かなりの勇気が必要だと思います。
「それはそれ、これはこれ…」と、きっちり分けて行動できるところが、ドイツ社会のしたたかさかもしれません。
利用者の方は慣れたもので、反応はいたって淡白です。年中行事の一つとして諦めていますし、「ストは労働者の正当な権利」であるとして容認しています。それでも、大いに迷惑な話ですが…。
【写真】
市内を走るすべての交通機関がストップしたわけではなく、対象外の交通機関は通常運行。電光掲示板:「9月29日 03:00から30日 03:00まで、警告ストライキを実施」