
ドイツの古い建物といえば、まず思い浮かぶのは荘厳な宮殿や教会、旧市街地に整然と並ぶ中層住宅や店舗など、いずれも石造りの建築物。木の骨組みと土壁で造られた、いわゆる「木組みの家 」もあるが、日本人にとっての中世ヨーロッパの街並みは、やはり石畳の道をガタガタと馬車が走るあのイメージではないだろうか。
あまり知られていないことだがドイツにも木造建築の長い伝統があり、特にドイツ南西部の黒い森地方では純木造の古民家が現役で活躍している。日本の農村にある古民家と比べ、屋根の形が多少違う、白い障子の窓が見当たらない、窓に綺麗な花のプランターが飾られているといった違いはあるが、遠めに見れば実によく似ている。
そういった古民家は文化財的な価値が高いにもかかわらず、建て替えによって数が大きく減少している。近代的な生活様式にそぐわない部分が多く、改修に多額の費用がかかるなど、取り巻く状況の厳しさもまた日本の古民家に通じる。
そんな古民家を何とか保存したい。その思いから出発し、6戸の古民家と15棟の木造建築物を展示するまでに成長した野外博物館が黒い森地方にある。単に木造建築物を集めるだけでなく、当時の生活を偲ばせる展示や催し物など「生きた博物館」の工夫が盛り沢山だ。
今回は、皆さんをフォークツバウアンホフ古民家野外博物館へお招きし、黒い森の暮らし発見を楽しんでいただきたい。…
◆ 松田雅央「ドイツ環境レポート (第51回)」『日経研月報』、Vol.338, pp46-53, 2006.08