
開発面積120ha、工事期間15年、全工区が完成すれば住宅1,700戸と5,000人分の職場を生み出す新市街区「バーンシュタット(Bahnstadt)」の建設がドイツ・ハイデルベルク市で進められている。環境都市を標榜する同市にふさわしく、プロジェクトの最重要コンセプトはエコロジカルで持続可能な市街区の創造。緑地整備と省エネに注力し、特に住宅・オフィス・商業ビル・幼稚園まですべてパッシブハウス基準(Passivhaus Standard)で建設するというプランはその規模において他に類をみない。
ハイデルベルク市と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは観光都市のイメージであろう。古城や旧市街地は中世のたたずまいを今に残し、ネッカー川岸から城を見上げる観光景観は旅行ガイドにしばしば登場する。ハイデルベルク市はまた600年の歴史を誇るドイツ最古の大学を擁し、とりわけ医学やバイオ分野の評価が高い。同市はバイオ技術のクラスターを形成するハイテク産業都市という顔も併せ持っている。
多様な側面のあるハイデルベルク市が「環境都市」と「古都」という際立った個性を活かしながらどのような未来を築こうとしているのか。本稿では環境を軸に持続的発展を目指すハイデルベルク市のまちづくりを探りながら、バーンシュタットプロジェクトの持つ意義を検討してみたい。…
◆ 松田雅央「ハイデルベルク市の環境市街区開発「バーンシュタットプロジェクト」」『日本不動産学会誌』、No.102, Vol.26, No.3, 2012

