
時折り「黒い森の酸性雨被害」について日本から質問をいただくことがある。
酸性雨による黒い森の枯死がセンセーショナルに報じられ、環境汚染の象徴として議論を広める契機となったのが80年代。そのイメージを基にしているのだろう、「被害の現状が一目でわかる写真」の問い合わせをいただくこともあるが、これがなかなか難しい。実際のところ、黒い森を歩いても酸性雨の被害を見つけることができないのだ。
だからといって、黒い森が健康体に戻ったというわけではない。今も約3割の樹木が酸性雨のため痛んでいるのだが、ピーク時に比べるとその被害は確実に小さくなっている。加えて、その他の被害が顕在化しているため、酸性雨被害の比重が小さくなり目立たなくなったという事情もある。
森が局所的に禿げている場所はあるが、その多くは1999年の嵐によるもので酸性雨が直接の原因ではない。ごく簡単に書けば、黒い森にとって「酸性雨被害がシンボルの時代」は過ぎた、ということになる。
本稿は前号の「黒い森の暮らし発見~フォークツ博物館~」に続く黒い森特集の2回目。「持続可能な森の利用」をキーワードとして、黒い森地方における林業と環境保全の現状をレポートする。…
◆ 松田雅央「ドイツ環境レポート (第52回)」『日経研月報』、Vol.339, pp44-51, 2006.09

