【雑誌論文】旧東ドイツのまち改造プロジェクト① ~ 縮小政策というまちづくり ~

取り外された窓と窓枠のうち状態の良いものは東欧諸国へ輸出される。  また、プレハブ建築であるため「建設と逆の順序」で解体することも可能。その再利用も検討されたが、これは採算性から実現していない。
取り外された窓と窓枠のうち状態の良いものは東欧諸国へ輸出される。 また、プレハブ建築であるため「建設と逆の順序」で解体することも可能。その再利用も検討されたが、これは採算性から実現していない。

 1989年11月、ドイツ分断と冷戦の象徴 「ベルリンの壁」が崩壊した。その後、東西ドイツの統合はソ連・ゴルバチョフ書記長、アメリカ・ブッシュ大統領、西ドイツ・コール首相ら各国首脳の思惑を遥かに上回るスピードで進み、早くも翌年10月に西ドイツが東ドイツを吸収する形で統一が成されている。「ひとつのドイツ」は東西ドイツ国民の悲願であり、わけても疲弊した生活と抑圧から解放された東ドイツ国民の思いにブレーキをかけることは誰にもできなかった。

  しかし、当時の国民が描いていたバラ色の統一ドイツ像は未だ実現していない。統一前、西ドイツは東ドイツ経済を「手直しが必要な建物」程度に考えていたが、フタを開けてみたら、それはいわば「手の施しようのない廃屋」であった。インフラ整備は急ピッチに進んだものの、瓦解した旧東ドイツ経済の建て直しは容易でなく失業率もまだまだ高い。

 経済と並び人口減少も深刻だ。ベルリンを除く旧東ドイツ5州の人口は13%以上も減少しており、危急存亡のときに立つ自治体もある。州によって状況は異なるが、特にザクセン・アンハルト州からは5人に1人の市民が州外へ移住してしまった。

 ドイツ社会はこれまで経験したことのない「縮小を前提とするまちづくり」を問われている。果たして人口の減少する自治体に未来はあるのか? そこで登場する、いわゆる「縮小政策」とは一体どのようなものなのか?

 これから2回に渡り連邦主催のまちづくりコンペ 「まち改造-東」を題材として、人口減少を直視した旧東ドイツの新たなまちづくりを探ってみる。…

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◆ 松田雅央「ドイツ環境レポート(第62回)」『日経研月報』, 第349号, p34-41, 2007.07.

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