世界中で醸造されるビールの約7割は下面発酵(ラガー)ビールの一種ピルスナーである。
澄んだ黄金色とすっきりした味わい、そしてホップの苦味を特徴とし、ヨーロッパの多くの地域で単に「ビール」と注文すればこれが出てくる。日本で醸造されるビールもほとんどがこのピルスナータイプだ。
5000年を超えるビールの歴史に比べるとピルスナーの醸造法が確立したのはずいぶん新しく、19世紀半ばチェコ西部の都市プルゼニ(ドイツ名Pilsen:ピルゼン。ピルスナーの呼称はこの名に由来)でのこと。
低温の洞窟に樽を置きゆっくり熟成させるラガービールの製法はドイツ・バイエルン地方に以前からあったのだが、一定品質のビールを安定して生産するには発酵・冷蔵技術、機械化が必要とされ、完成はこの時代を待たなければならなかった。…
◆ 松田雅央「ヨーロッパの街角から」『日経研月報』、Vol.432、2014.06.