ドイツの電力自由化が本格的に始まったのは90年代後半のこと。今はどの世帯でも希望する電力会社と文字通り自由に契約できる。当然、既存の電力会社は顧客の繋ぎ止めに知恵を絞り、新規事業者を交えた競争が繰り広げられている。
自由化が始まるまで、私の住むカールスルーエ市では地元の公営企業シュタットベルケ・カールスルーエが電力供給を独占していた。シュタットベルケとは元々エネルギー供給を行う地方自治体の役所で、全国におよそ800ある。これらは民営化され、公営企業、第3セクターあるいは完全な民間企業に組織替えしている。
日本の電力会社と異なり、ガス、熱(暖房給湯用の温水)、水道水も供給するのが特徴だ。このような状況の下で、現在はシュタットベルケと新規事業者が電力会社として電力を小売している。…
◆ 松田雅央「ヨーロッパの街角から」『日経研月報』、Vol.452、2016.02.