住民自らエコ電力会社を立ち上げた村がある。
普通、地域の送電設備を管理し配電するのは、自治体のエネルギー供給部門を民営化した会社か、大手電力会社と相場が決まっている。電力はわずかな空白も許されない安定重視の事業であり、ここシェーナウ村の試みはドイツでも全く初めてのことだった。
きっかけは1986年のチェルノブイリ原発事故に遡る。2000キロ離れているにもかかわらず放射性物質が飛来し身をもって危険を感じた住民、特に母親らが電力会社に脱原発や節電を促す料金プランを求めたが、訴えは冷たくあしらわれてしまった。
電力会社の姿勢に不満を募らせた住民は、EWS社(シェーナウ電力会社)を設立し10年の運動を経てついに電力供給を開始した。…
◆ 松田雅央「ヨーロッパの街角から」『日経研月報』、Vol.437、2014.11.