隣国と接していない日本は、国境というものに馴染みが薄い。多くの日本人が国境からイメージするのは、検問所、国を隔てる柵や壁だと思うが、ヨーロッパ諸国間の国境事情はここ20年でずいぶん様変わりした。
以前は国境を通過するたび検問で緊張したものだが、EU(欧州連合)の結びつきが深まるにつれ国境の持つ意味は急速に薄まっている。国境に立つのは看板だけ。ごく普通に通勤・買い物・観光で行き来できるから(写真)、生活する上では県境ほどの重みしかない。
とは言っても国境は確かに存在し、それを実感する場面も少なくない。…
◆ 松田雅央「ヨーロッパの街角から」『日経研月報』、Vol.418、2013.04.